のべりんちゅ.

坂井美月と申します♪ よろしくお願いいたします♡

【ヒミツの時間】KISSの法則 第2話 オトナとコドモ

 

オトナとコドモの差は歴然。
榊課長は「待っててやる」って言うけれど……

 

 

【ヒミツの時間】KISSの法則 第2話 オトナとコドモ

 

KISSの法則・オトナの事情

 

「……出るぞ」

トレイもカップも強引に片付けられて、気づいたらカフェの外。

背中に回された手は、ダイニングバーの時よりも力がこもっていて。

心なしか、熱い気さえする。

驚く私の心を置き去りに、すごい速さでずんずん歩いて。

なにが、どれが、こういう状況を作った原因だっけ?

身体は榊課長に預けたまま、足だけしゃかしゃか動かしながら、ぼんやり考えていた。

ヘッドライトの眩しさがまばらになって、もう目を細めなくても平気、なんて考えていたら。

不意に、前のめりになる状態を抱きとめられて。

立ち止まったのだと気づく。

 

 

 

「ばか、麻衣」

言葉とは裏腹に、優しく包む体温。

心地好くて、彼の胸にすりよる私。

「店の中で、不用意にああいうことを言うな。

 あの店、出禁になるくらいはずかしいことするぞ。

 ……オレの理性に感謝しろ」

榊課長の言葉に驚きながらも、やっぱり離れられなくて。

ほっぺをぎゅっとくっつけて。

大きな背中にそっと手を回す。

はい、と返した自分の声音が甘くて。

胸がきゅうんと疼いた。

 

 

 

ずっとこうしていたいのに。

「タイム」と肩を優しく持って距離を取られた。

「これ以上は、無理。やばくなるから」

首をかしげると。

「それも説明しないと、わからない?」

少し考えて。こくんと頷く。

「ゆっくり合わせて進むって決めたから。

 あんまりくっつくと、サカる……

 じゃないな、暴走しそうで怖い」

暴走……小さく呟くと。

「つまり、あれだ。

 ハツジョウしちゃうってこと」

ハツジョウ。

はつじょう。

……発情っ? 

漢字に変換できて、がばっと身を離す。

 

 

 

「今度こそ送る。

 タクシーでいいよな?」

「電車、あります」と熱い頬を押さえながら答えたら。

ふん、と面白くなさそうに鼻を鳴らして。

「家、どこ?」と訊ねる彼。

最寄駅を伝えると、路線は違うけれどお互いの家が割と近い場所だと判明。

「別の電車に乗るより、タクシーの方が長く居られるだろ」

有無を言わせない雰囲気で、手をつなぐ。

嬉しいけど。

“発情”は刺激が強くて、くらくらしちゃう。

 

 

 

「変更するのもアリ、だよな」

唐突なひとりごとに見上げると。

「通勤の定期券。

 麻衣の路線に合わせれば、一緒に居られるし。

 送るのも効率的だろ?」

でも、遠回りじゃ……、と。

言葉にする間もなく。

「定期代が安くなるはずだから、総務に文句は言わせない。

 同じ路線なら、一緒に歩いててもおかしくないし。

 なっ?」

満面の笑みを浮かべる彼に、頷くしかなくて。

畳み掛けるような論破テク。

定期券如きでこうなのだから、これが企画のプレゼンだったら……

ありとあらゆる角度から、鮮やかな切り口で臨むんだろうな、と。

企画に行けない自分が、じれったかった。

 

 

 

「あ、そうだ」と胸ポケットをごそごそ。

「これ、オレの名刺。

 明日、手が空いたらオレの社内メールに、空メール送って」

え? と、訊きかえすと。

「麻衣の社内メールアドレスが知りたいんだよ。

 1件、急ぎで頼みたい仕事があって。

 ただし、新堂には内緒な」

あ、仕事。

社内メールだけ、なんだ。 

 

 

 

「プライベートのメアドは……

 交換しないんですか?」

「あぁ、そうだな。

 そういうの交換するもんなんだな。

 キーボードじゃないと打ちづらいし」

なんか可愛くて。

まじめなとこが嬉しくて。

顔が綻んじゃう。

「私も得意じゃないです。

 お兄ちゃんとの連絡にしか使わないし」

お兄ちゃん? 榊課長が訊くから。

社会人として”お兄ちゃん”はダメだよね。と、反省しつつ。

兄です、と。言い直す。

 

 

 

……あれ?

なんか、お兄ちゃん絡みで大事なことがあったような……。

なんだっけ。もやもやする。

……ま、いっか。

そう、お兄ちゃんより。

今、大事なのはプライベートのメールについて。

「あの……

〈おはようございます〉と〈おやすみなさい〉は、送ってもいいですか?

 返事は要らないので」

ドキドキしながら訊いてみた。

「返事はするさ。当たり前だろ」

そう言って頭をくしゃっと撫でられて。

ぎゅっと胸に抱え込まれた。

 

 

 

安心できる大好きな香り。

夏の“バックの左手事件”と同じマリンの……。

そう、お兄ちゃんと似た香り。

マリンの香水は、一昨年のお兄ちゃんへのお誕生日プレゼント。

お店で試しすぎて、ワケがわからなくなりながらも

一番好きな香りをチョイスした。

意気揚々と渡したのに、お兄ちゃんてば、ちょっと困った顔して。

でも、「嬉しい」って言ってくれて。

それから毎日マリンの香り。

 

 

 

ああ、なんだろう。

やっぱり大事なことを忘れている気がする。

お兄ちゃん、お兄ちゃん……

えっと、なんだっけ。

「あっ!」

思い、だした。

胸の中で大声をあげたせいで、榊課長がびくっと揺れた。

「ごめんなさい、突然」

榊課長の心臓が、すごく速くなってる。

びっくりして、とくとくを宥めようと彼の胸を撫でたら。

困った顔して、腕を優しく掴まれた。

「それも、無理。……サカるぞ」

びくっとして、少し離れる。

「計算じゃないから、タチが悪いんだよな」と呆れ顔。

 

 

 

「そうそう。さっきの社内メールだけど」

ゆっくり歩きながら言う彼。

「空メール厳守だぞ。

 麻衣、律儀そうだからしつこく言っとく。

 “昨日は……”とか、“また行きましょうね”とか。

 “大好き”は、ないよな。

 そういう文面はなし、な」

社内メールに“大好き”なんて。

俯く私の耳に、くくっと笑い声。

絶対、からかってる。

でも。

お礼もダメ、なのかな?

驚いて見上げると、目が合って。

面白がっていたはずなのに、真剣なまなざしにちょっと戸惑った。

 

 

 

「ウチの社内メールは人事のトップに監視されてる。

 企画以外、な。

 企画までチェック入れると、情報漏洩に繋がるから」

榊課長は胸を反らせる。

もしかして……威張ってます?

「あ。そうなんですね」と答えたら

「驚かないの?」と。

榊課長の音域の中では比較的、素っ頓狂な声で訊く。

だって、コドモっぽく威張ってるから、そっちに気を取られて。

「管理職だけの極秘情報だぜ。

 一般社員は知らないはずだけど」

「あ、はい。知りませんでした。

 でも、納得はできるし」

へえ、と。気の抜けたような呆れたような声に。

返し方を間違えちゃった、と不安になる。

きっと、可愛く感心しながら驚くのが、正解。

 

 

 

「あ、じゃあ。

 あれも見られたんだ……」

凹みながらも、思い出して小さく呟く。

名古屋に配属された同期のコから送られた……

榊課長を知るきっかけになった、あのメール。

「あれってなんだ?」と榊課長が訊く。

「入社してすぐ、なんですけど。

 名古屋のコから、社内メールが来て。

 それが、その。

 オフィシャルとは言いがたい内容だったんです」

ああ、と。頷く彼。

「本社のイケメン二人ってやつ、だろ」

どうして、それを? 

まさか、人事トップから管理職全員に通達が出る、とか。

所属、名前、メールの内容まで?

 

 

 

「口が開いてるぞ」

にやりと笑って。

「高橋と新堂は付き合ってるからな。

 あいつら、肝心なことは隠すくせに、どうでもいいことは筒抜けなんだよ」

それで、知ってるんだ。

肝心なことと、どうでもいいことは、謎だけど。

安心した。

「オレもまぁ、人のことは言えないか。

 社内メールのこと、自慢げに喋っちまったし」

自慢げ、だったんだ。

ちょっと可愛いかも。

「軽蔑してたのにな。

 付き合ってるからってぺらぺら喋る、あいつらのそういうとこ」

 

 

 

「なんだろうな。

 麻衣だけに教えてやるんだぞ、みたいな。

 得体の知れない感情が生まれた」

つないだ手にきゅっと力がこもって。

「“ヒミツの共有”、みたいな?」

ヒミツの共有。

つまり、二人の秘めごと。

オトナ、テイスト。

「驚くだろうな、と思ったのに軽くスルーされたし」

拗ねた声音に、笑いがもれた。

そんなに違和感なかったんだもん。

会社が、社員の社内メールをチェックすること。

だって……。

 

 

 

「あー、やべ。

 オレ、守秘義務違反で懲罰に掛けられるかも」

え? そんな、大げさな。

でも。そっか。

社内秘事項だもん、あり得ないことじゃない。

ばれたら、懲罰……

て、ことは。

ばれちゃ、いけないんだ。

「私、誰にも言いません。

 あのっ、忘れます。

 あれ? もう、忘れました」

慌てふためく私の頭を、くしゃっと撫でて。

「忘れたら、空メール送らないだろ。

 ほんとに不器用だな」

 

 

 

笑い声がフェードアウトすると。

「それで?」といきなり低い声。

「さっきから、迷ってるって感じだけど。

 ……言いづらいことか」

ひゅっと、喉が鳴る。

オトナの榊課長には、私みたいなコドモが必死で隠している姿なんてお見通し。

「なんか思い出したんだろ? でっかい声出してさ。

 オトナぶって待ってみたけど、限界だ。

 言って、ちゃんと聞くから」

優しく諭されるような声音に、胸がじんとふるえた。

“思ったことは言葉にする”

2つめの約束をもう反故にしようとしてた、浅はかな私。

 

 

 

KISSの法則・コドモの事情

 

「あの。

 ……兄に、会っていただけますか?」

「ん?」

訝しげに訊く榊課長。

「約束、なんです。

 お付き合いを始めるなら、相手の人に会わせなさいって」

コドモみたい、だよね。

オトナはこんなこと言わない。

でも、お兄ちゃんとの約束だし。

自分で約束したことだから。

あの時は、こういう日が現実になるなんて思わなかった。

 

 

 

「ごめんなさい。

 ダメだったらいいです」

「ダメじゃないけど……」

榊課長は呟いて。

「にいちゃんは、頭ごなしに反対するタイプなのか?」

にいちゃん……

なんか、可愛い。

わかりません、と。にたにたしながら答えたら。

ぁあ? と若干凄まれた。

びっくりして、ぴくんと反応。

「わりぃ、怒ってんじゃない。

 口癖だから、気にするな。

 ……っていうか、慣れてくれ」

慣れる……榊課長の口癖に。

こくこく頷きながら、嬉しくて胸がほんわかする。

 

 

 

「初めて、なんです。

 お付き合いも、お兄ちゃんに会ってもらうのも……

 だから。

 わかりません、ごめんなさい」

「謝らなくていい」

頭を撫でながら、くつくつ笑う榊課長。

「色々、初めてなんだろうなっていうのは、もろバレだったけど。

 わかってても、思った以上に擽ったいもんだな」

もろバレ、でしたか。

……やっぱり。

 

 

 

「嬉しいものだけどさ、心構えも要るんだよ」

ほんの少しだけ固い声に、顔を上げる。

「こころ、がまえ」

小さく呟く私と目を合わせて。

「あー、誤解するな。

面倒なんじゃないぞ。

正しい手順踏まないと、麻衣に逃げられそうってこと」

「逃げません」

口をとがらせる私に、いじわるな笑みを浮かべて。

「発情っていう言葉くらいで、逃げ腰のくせに」

鼻で、哂われた。

 

 

 

「麻衣ってさ。

 もしかして“お嬢”なのか?」

走るタクシーの中で訊く彼。

きっと、閑静な住宅街と呼ばれる場所を告げたから。

「違いますよ」

お嬢っていう言い方は、あまり聞かないけれど。

お嬢……ではない、と思う。

お友達のおうちみたいに、家族以外の住込みの“誰か”はいないし。

ただ。たぶん。

裕福な家だとは思う。

そして。

家族構成はそこそこ普通だけれど、いろいろ変わっている、かも。

 

 

 

「今夜も、ちゃんと挨拶するから」

繋いだ手に、きゅっと力がこもる。

「いえ、今夜は誰もいないんです。

 遅くなるって連絡がありました。

 兄には話しておくので、また日を改めてお願いしてもいいですか?」

緊張して答えたら。

「ん? なんかいきなり他人行儀だな」

顔をよせるから、頬が熱くなる。

「緊張、してきました」

だって。

考えれば考えるほど、不安が募る。

お父さんとお母さんの所在、とか。

あの、ひとことでは形容しがたいお兄ちゃん、とか。

 

 

 

すべるように停車するタクシー。

すっと離された手が、ひんやりする。

もう、タイムリミット。

もっと一緒にいたいけど、それはコドモの我儘だってわかってる。

淋しくて、榊課長の手の行方をぼんやり目で追うと。

離した手で、支払いを済ませるから、びっくりした。

「ちょっと、ここで待っててください」

タクシードライバーさんに声を掛けて。

また、手が心地好い温もりに包まれた。

「玄関まで送る。

 ……っていうか、これのどこがお嬢じゃないんだよ」

ゲートの奥に、ロータリーのあるエントランス。

ホテルのミニチュア版みたいな。

そう、思うよね。

 

 

 

ゲートのロックを、リモコンキーでピッと解除。

「お、オレの実家もこんな感じ」

「そうなんですか?」

思わず弾む声。

外部入学の短大のコみたいに、すごい! なんて言われると、気後れして首がすくんじゃう。

だって。

私はただ、ここの娘なだけで。

この家は、両親のものだし。

便利な最新設備は、お兄ちゃんがつけたものだもん。

すごい! は、私に向けられた言葉じゃない。

 

 

 

「ここで玄関に入るとこ見届けて、帰る」

ううぅ、淋しい。

朝、このゲートを通ったときには想像もしなかった急展開。

話ができて、付き合うことに。

大切って言われて。

“決めごと”に、ときめいて。

“秘めごと”に、揺らめいて。

なのに、離れがたいなんて。

ほんと、欲張りな私。

 

 

 

「じゃな。おやすみ。

 あ、社内メール、忘れるなよ。

 言っとくけど、空メールだからな」

口調は優しくて甘いけど。

さっぱり、あっさりな榊課長。

振り向いたら、片手を上げてくれて。

ううぅ、やっぱり淋しい。

 

 

 

KISSの法則・妖美と無垢

 

「お兄ちゃん、おかえり。

 あのね。ちょっといい?」

その晩、深夜に帰宅したお兄ちゃんをリビングで待ち伏せた。

「こんな遅くまで起きているなんて。

 麻衣もずいぶんオトナになりましたね」

むう。すぐ、コドモ扱いして。

確かに、ね。

15歳も離れていれば、コドモだけど。

 

 

 

私が21歳だから、お兄ちゃんは今年36歳。

辰年生まれ、としおとこ。

節分の時、強引に豆まきをしてもらったっけ。

実のところ、はしゃいでたのは私だけ。

豆まいて、と。

せがむ私に、困った顔で微笑んで。

お兄ちゃんてば、クール且つ華麗に

その上、優美に色っぽく、しゃらんしゃらんと豆をまいてた。

 

 

 

「……それで?

 お付き合いしている人を紹介してくれるんですか?」

鬼を退散させるというよりは、鬼を魅入らせてしまうほどの艶っぽい豆まき姿を思い出して、トリップしていた私。

ほぇ? なんて。

気を抜きすぎていて、ヘンな声がもれた。

「ど、どどど。どうして? なんで?」

今日、付き合ったところ、だよ。

狼狽える私に、ちらりと流し目を送って。

「麻衣はわかりやすいですから」と、ひと言。

 

 

 

「……そうですね。

 一昨年の11月。

 私の誕生日に香水を贈ってくれたでしょう?」

「うん、贈りました」

頷く私。

あの微妙な反応の時、でしょ。

でも、その時は。

まだ入社前。もちろん榊課長に出会ってもいない。

「私のイメージとはずいぶん違う香りでしたからね。

 ああ、麻衣は近い将来、私から巣立っていくんだな、と悟りました」

そんなことで?

それで、あんな困った顔してたの?

もしかして。

思い込みが激しいのは、遺伝なのかも。

 

 

 

「……そして。

 私の再三の誘いにも屈せずに、自分で内定をいただいたでしょう?

 もはや、私の影響力も弱まっている、と痛感しました

「そんなぁ」と、声がもれた。

影響力なんて、人聞きの悪い。

まるで、私を操っているみたいな言い方して。

確かに抗えないけれど、最後はちゃんと私自身に決めさせてくれるでしょ。

 

 

 

「お勤めをはじめて……、そうですね。

 夏くらいから、麻衣は女の子っぽくなりました」

ほんとッ? と。

嬉しくて声がワントーン高くなった私に、くすりと笑みをもらし。

「同年代のお嬢さん方と比べれば、おさるさんみたいですけどね」

爽やか、且つ、妖艶に……けなされる。

むきぃっ、と。

お猿のまねを披露しながら、思うのは。

夏、ということは、“バックの左手”。

そんなにわかりやすいのかな、私。

 

 

 

「……そして。

 秋の中頃でしょうか。

 急に紅くなったかと思うと、もじもじしては、首をぶんぶん振って。

 とうとう、人間からの退化が始まったのかと……

 心配と言うよりは、興味深く観察していましたが」

「ひどい、もう!」と、抗議しながら。

それは“充電”が原因、と思い当たる。

 

 

 

「冬になったら、ため息ばかり。

 切なそうで、見ていられませんでした」

思い出すだけで、今も胸がきりり、と痛む。

秘書課のアケミさん、のこと。

「ああ、誰かに恋焦がれて、身を灼かれるような思いを味わっているのでしょう、と。

 その元凶を捩じ切ってしまいたいほどでしたよ」

捩じ切るって……。

もう怖いよ、お兄ちゃんてば。

……あ。

目が笑ってない。

 

 

 

「それで、お相手の男性は」と言いかけて。

「……男性でよろしいですか?」と確認される。

「よ、よろしいですっ!」

ぶんぶん頷く私に、忍び笑いをもらすお兄ちゃん。

もう、からかいすぎ。

「そのお相手の方は、私に会ってくださるんですか?」

うん、と頷くと。

「そうですか」

呟いて、ふつりと黙り込み。

「とうとう、来てしまいましたか」

淋しそうに微笑んだ。