【もとかれ】第12話 縒り合わさるココロ
意地悪よっちゃん
「勇人。もしかして、妬いてるの?
……あ。ごめん、ごめん。冗談、です」
従兄だって、前からあれだけ言ってるんだし。
妬いてるわけないよね。
自惚れすぎでしょ、私。
「かなり本気で、妬いてるけどっ?」
それがどーした、と言わんばかりの睨み方。
「え。なんで? よっちゃんって従兄だよ」
従兄だからなんなんだよ、と。
勇人はふてくされたように呟いて。
「従兄とは、恋愛にも結婚にも制約はないからね」
もぉ、バカよっちゃん!
なんで、チャチャいれるの?
「言っとくけど、俺は明日香の従兄じゃないよ」
……え?
え? 今、なんて?
睨み上げたまま、握った拳をゆっくりほどく。
「……な。なんで、嘘つくの?
勇人が気に入らないから?
それとも。
私が、嫌い……だから?」
嫌い、とまでは行かなくても。
気に入られてはないんだろうな、って……気づいてた。
奇抜なファッション。
ドライブだって自分の行きたいとこばっか。
気遣われたことも、可愛がられた記憶も、ない。
だけど……だからって。
嘘まで、つくことないじゃないっ!!!
わなわな、ふるえる手。
泣かないように唇を噛みしめて、よっちゃんを睨む。
のらりくらりと躱すよっちゃんにはいつも勝てなくて、結局諦めてたけれど。
今日のは……絶対許せない。
言葉じゃ勝てないから、最悪チカラに訴えてでも……
ふがぁ、と。
気負いすぎて鼻から息がもれる。
「明日香~。恋する乙女が台なしだよ。
はい、とりあえず。
“いつものとこ”着いたから。
俺ね。文句は、座って聞く主義なの」
ほんとだ。いつものダイニングバー。
いつの間に。
怒りでずんずん歩いてきたっぽい。
我に返ると、勇人に肩を抱かれていた。
「明日香。そんな怒んなよ。
怒ると真実がぼやけちまう。
オレも、さ。
その……ガキみてーに妬いて、大人げなかった」
わりぃ、と。
照れたような笑顔の勇人に、きゅうんとなる。
「せっかく再会できたんだ。
もう、揺るがない。ずっとそばにいる」
肩を抱く手に力をこめて、耳元で囁く。
「おふたりさ~ん。
入口で見つめ合わない。邪魔、邪魔」
空気を読まない、よっちゃん。
あ……それは私たちの方かも。
紅い頬を隠すように俯いて、やっとのことで席に着く。
勇人にちょこちょこ質問しながら、てきぱきとオーダーするよっちゃん。
「はいよ。思う存分、文句たれていいぞ、明日香」
準備OKみたいに言われると、それはそれで……
「……どうして、嘘つくのよ」
「従兄じゃない、って話?」
よっちゃんの言葉に、頷く。
呆れたように肩をすくめて大きく息を吐く、よっちゃん。
今日はいつもの私じゃない。勇人がそばにいてくれるし。
絶対ペースに乗せられないんだから。
「じゃさ。
なんで明日香は俺のこと従兄だって思ってるわけ?」
なんで? なんで……。
なんでって、どういう意味?
「だって。ずぅっとお隣さんで。
毎日ごはん食べに来てたし。
お風呂だって、自分ちみたいに入ってたじゃない」
あ~、それでか、と。よっちゃんは軽くあしらう。
「そりゃ、ま~な。
俺と母ちゃんが明日香んちの隣に引越したのって、明日香が赤ん坊の頃だったし。
憶えてたら、逆に怖いけど」
引越してきたんだ。
ずっと代々。お隣に住んでいたんだとばかり思ってた。
「俺が聞いたところによると。
明日香が勝手に思い込んでるって」
思い込んでた、の? 私が? 勝手に?
「由香里は何度も訂正したらしいぞ。
だけど、明日香の頭の中には“よっちゃん=従兄”ってきっちり刷り込まれてて」
なにそれ。
刷り込みって、生まれたてのヒナみたい。
「明日香の頑固さに、み~んなさじ投げて。
小学生になった頃には、めんどくさいから訂正しなかったって」
頑固じゃないもん。
ちょっと思い込みが激しいかも、って程度でしょ。
「……じゃあ。
よっちゃんて、何者?」
従兄だと思ってたよっちゃんが、身内じゃないオトコの人だったとしたら……
ドライブも、ジュエリーショップも、違った意味を持つ。
「あ? あぁ……」
狼狽える、よっちゃん。
「いいか。落ち着いて聞けよ」
こくこく頷く私の手を、勇人がぎゅっと握ってくれた。
「うちの母ちゃんと、明日香の母ちゃんが親友で。
俺んとこ離婚したもんだから、世話好きの明日香の母ちゃんが親切にしてくれて。
隣の空き家を格安で借りられるように話をつけてくれたり、俺の飯の面倒見てくれたり、ってな」
それって。いわゆる。
「た……他人、ってこと? つまり」
声がふるえる。
今更、よっちゃんを特別視なんてしないけど。
知らなかったこととはいえ、身内じゃないオトコの人と二人っきりだったことに、衝撃。
「由香里がさ……」と。
よっちゃんはもごもごとトーンを下げて。
「“従兄じゃないって知ったら、明日香はすごい勢いで拒否反応示すよ”って、脅かすもんだから。
それはまずいな、って……」
しどろもどろのよっちゃんに、身を乗り出す勇人。
「なんで、まずいんだよ?」
勇人の言葉に勇気をもらって、便乗する。
「そうよ。別にいいじゃない。
由香里ちゃんに私を押し付けられて、迷惑そうだったくせに」
目を見開くよっちゃん。
「違うって。勘違いすんなよ~」
なんか、よくわかんないけど……
よっちゃんがたじたじだ。
やったぁ。初めて一矢報いたかも!
「由香里は、明日香にめろめろだからな。
明日香に拒否されたら、由香里も遠くなるだろ」
……は?
よっちゃんてば、ゆでだこみたいに真っ赤だよ。
急にどうしたんだろう、と。
訝しがりながら、言葉の意味を考える。
由香里ちゃんが遠くなるとまずい、ってことは。
由香里ちゃんとお近づきになりたい、ってことで……。
そのために私から拒否されるのを避けた、ってこと。
つまり。
「よっちゃんって。由香里ちゃんが好き……なの?」
がばっと顔を上げたよっちゃんは、うるうるした瞳で小さく頷いて。
きゃぁあ、と奇声をあげながら、テーブルに突っ伏してしまった。
なに……この、反応。
ちょっと。ううん、かなり……キモいんですけど。
「お待たせしました~。……うぉっ?」
ドリンクとお料理を持ってきたお店の人が、突っ伏すよっちゃんにぎょっとしてる。
すみません、の意味を込めて。肩をすくめて愛想笑い。
「よっちゃん。ほら、ふて寝しないでよ。
大丈夫。笑ったりしないからさ。
よしよし。由香里ちゃんに玉砕しちゃったんだよね」
グラスをそれぞれの位置に置きながら、軽い感じで声を掛ける。
「……誰が玉砕だって?」
突っ伏した姿勢のまま、ちょっとだけ顔を上げて睨むよっちゃん。
「明日香って、ほんとに人の話を聞かないんだな」
不満そうに口を尖らせて、ゆっくり顔を上げる。
「言っただろ? 婚約者がいるって。
ずっと好きで、果敢にアタックして、やっとOKもらえたってさ」
え?
あ。さっきジュンコさんに言ってた、あれ。
「でも、私。由香里ちゃんからなにも聞いてないよ」
そうだよ。
よっちゃんの妄想が真実なら、由香里ちゃんが私に内緒にするはずないもん。
「明日香、しょんぼりしてただろ?
初めての恋に惨敗してさ」
よっちゃんの反撃に、すかさず勇人が割って入ってくれた。
「惨敗なんてしてねーし。
させるわけねーだろ。ばーか」
頬が熱い。
させるわけねー、なんて。勇人が言うから。
「あ~。バカって言ったな。
バカって言う方が、バカなんだからな」
睨み合う2人が小学生みたいで、くすくす笑いがもれる。
「由香里は明日香が心配で。
それが痛いほどわかってたからさ……」
よっちゃんはそう言って、自分の服をまじまじと見る。
「わざわざ、いつも着ないカッコしてきたのもそのためなんだよ。
つまみ出されたら、職場参観になんないだろ」
そうだった。
今日、どうして講座にいたのか……
詳しく聞こうと思ってたのに、忘れてた。
正直に言っちゃうと、勇人に夢中で。
「久我さ。
俺がいつもどんなカッコしてるか、明日香から聞いたことある?」
ああ、と。勇人は頷いてひとこと。
「ピンクの動物だろ?」
あは。それだとヨークシャー種の豚みたい。
「ひで~な。
でも、ま。そんなとこだな。
言っとくけど、昔っからそんなカッコはしてね~ぞ。
高校生まではかなりイケメンだって噂でさ、超モテてた」
そう、だっけ?
そう言えば、女の子がお隣で待ち伏せしてて。
よっちゃんに手紙とか、バレンタインのチョコとか頼まれてたような……
「由香里のことを意識したのって、俺が高校生の頃で。
それまではさ。
黙ってりゃ綺麗なのに口喧しいオンナ、って敬遠してたんだよ。
それが……ある日、あるきっかけで惚れちまった」
それは二人だけのヒミツだけど、って。
照れたように呟く、よっちゃん。
「そっからは、もう一途。
オンナのコたちとも全部さよならして。
ちゃらちゃら生きてきたのを反省して、猛勉強。
年上の由香里に何とかして認めてもらおうって、がむしゃらだった。
静岡から東京に就職した由香里を追っかけて、東京の大学入って」
ス、ストーカーじゃん。
「だけど、由香里は全然相手してくんなくて。
5歳年下のオトコに告られても、はいはい、って感じでさ」
由香里ちゃんにあしらわれる、よっちゃん。
すんなり想像できちゃう。
「自業自得なんだよな。
由香里に惚れる前は、オンナのコとっかえひっかえだったし。
痴話喧嘩も、二股の修羅場も全部見られてたし」
私だったら、絶交だよっ。
だって恋する乙女の敵だもん。
「だから、一途を貫いた。
しょっちゅう会って、その度に気持ちを伝えて。
一生涯オンナはお前だけだぁ~! って。街中で叫んだりして」
……前言撤回。
超、タチの悪いストーカーだ。
「その頃からだよ。
“明日香を模擬デートに誘え”って、由香里が言い出したのはさ。
“但し、明日香に手を出したらコロす”って、恫喝されて……」
由香里ちゃんの恫喝って、ちびっちゃうほど怖いはず。
私が小1の頃、クラスの男子にからかわれて泣いて帰ったことがあって。
翌日、目の当たりにしたっけ。
女子高生の由香里ちゃんが、小1男子3人を恫喝する現場。
思い出したくないほど……マジで怖かった。
「俺の純真を試してたわけじゃないと思うんだけど……
男っ気のなさすぎる明日香が、心配だったみたいでさ。
どうにかしないと将来に関わるって、悩んでたみたいで」
私のこと、悩むほど心配してたの?
嬉しいような、でも、ちょっぴり失礼なような。
だって。
自然にしてても、こうやって勇人に出会ったんだもん。
「明日香は俺を従兄だと思い込んでるし。
俺なら安全パイだ、って踏んだんだろ。
なによりも由香里自身がさ……
俺を“信用して、信頼しきってる”って。
“頼れる人が他にいない”なんてさ。
惚れたオンナにそう言われたら、嬉しいじゃん?」
可哀想な、よっちゃん。
由香里ちゃんに利用されてたにすぎないのに……。
「だから、どぴんくのアニマル柄で牽制してたのか」
勇人の言葉に、首をかしげる。
意味がわからない。
「俺は絶対揺らがない。……と、思ってたし。
いや待てっ、久我。違うって。
実際、1ミリも揺らがなかったんだって!」
立ち上がりかけた勇人を制するように、両手を上げたよっちゃん。
ぽかんと口を開ける私をちらりと見て、困ったようにそっぽを向く。
「……でもさ。
惚れぬいて何度も告ってんのに。
軽~くあしらう由香里に、正直凹んだ時期もあって」
ふぅ、と。
よっちゃんは小さくため息。
勇人は握った手に力をこめて、むすっとした顔。
「由香里と明日香はさ。
姉妹だけあって、性格も容姿も違ってるようで似てるんだよ」
えぇ? そう、かな。
由香里ちゃんはキャリアレディ。
すらっとした美人で、きびきびしてる。
私は、ちんちくりん。
鼻ぺちゃで、泣き虫。
真逆と言ってもいいくらい。
「ふとした仕草とか表情とか。
似てるからこそ、懐かれないように細心の注意を払ったんだよ。
どぴんくファッションに、山道ドライブ。
飯はファーストフードオンリー、ってな」
似てるからこそ……懐かれないように?
「だから。
明日香を押し付けられたなんて思ってないし。
迷惑だとも思ってない。
ただ……戸惑ってただけだよ」
「めんどくさくて、怒ってたんじゃないの?」
私の疑問に、よっちゃんは肩をすくめて。
「違うって。
明日香が……その。怖かった」
私が、怖い。
思い当たる節はないんだけど。
「タイミング的にハマったら、ふらふらしないとも限らない。
由香里に惚れてるからこそ。
明日香に由香里を重ねそうで、怖かった」
え。……えと。
なんか、怖いこと言われてる気が。
縒り合わさる赤い糸
「大丈夫だ。
明日香がふらつかせなかったから」
私の瞳を覗いて、微笑む勇人。
「そ。明日香は生身のオトコに興味なくて。
恋に恋するタイプだったの」
首をかしげて、確かめるように呟いてみる。
「恋に、恋する……?」
呆れたようにためいきをつく、よっちゃん。
ちょっとだけ口角を上げる、勇人。
「予備校なんてさ、一心不乱に勉強しなきゃなんないとこだろ?
それでも……いや、だからかもしれないけど。
泣きついて、もたれかかってくるオンナのコっているんだよ」
よっちゃんの話って、どんどん飛ぶ。
今、私の恋の話だったはず、なのに。
だけど。
耳が、頭が、よっちゃんの言葉を追って。
大人気講師っていうのは、あながち誇張じゃないのかも。
「俺だってまぁその、なんつ~か。
健康なオトコのコだからさ。
たまには、むしゃくしゃしたり、ムラムラしたり。
ムラムラしたり、いらいらしたり、ムラムラしたり……」
ムラムラ……の、比率がやけに多くない?
っていうか。どういうこと?
「なぁ、久我?」
ふられた勇人は面白くなさそうに鼻を鳴らして、よっちゃんを睨みつける。
「理性と本能と煩悩のせめぎ合い、みたいな。
俺さ。普通にしてたら、オンナのコがほっとかないだろ?」
そこはすかさず、大きく横に首を振った。
「おい、明日香ぁ」と。
声を荒げて睨む、よっちゃん。
おどけた仕草に、いつものよっちゃんだ、ってホッとした。
「とにかく。
明日香が全否定しても、オンナのコがほっとかないから……
予備校行くときも、あのカッコ。
“ドぴんくセンセ”って。
誤解されそうなネーミングで最初は呼ばれて。
今は“ぴぃちゃんセンセ”っていうニックネームに落ち着いたんだぜ」
どっちにしても、尊敬されてない気がする。
だけど。
おどけた“ぴぃちゃんセンセ”は、恋の対象からはフェードアウト。
それが、由香里ちゃんへの恋心に真っ直ぐ向かう手立て。
そして、他のオンナのコに対する優しさ、なのかも。
「ねぇ、よっちゃん。
恋に恋する、って……なに?」
訊きたかったことに、軌道修正。
積極的に恋するタイプじゃないのは、確かだけど。
恋に、恋をしてたわけじゃないもん。
「なんつ~んだろ。
明日香は、憧れてばっかだったよな。
先生とか、先輩とか、芸能人とか」
よっちゃんの暴露に、ふてくされた表情を見せる勇人。
「でもさ、けっこう。
憧れてるオトコから告られることがあっただろ。
うるうる瞳の美少女。可憐で清純。
あ。これは、姉バカ由香里のウケウリな。
明日香は見た目だけなら、モテるタイプだし。
中身はパソコンオタクみたいなやつだってわかんね~じゃん?」
褒めてるように見せかけて、ずどぉーんと貶す。
よっちゃんの得意技。
「憧れてたくせに、いざその相手から告られるとヒくんだよな。
“お願い、断わって”って。何度も泣きつかれて。
由香里も“そうしろ”って命令するから、仕方なくさ。
片想いに身悶えする俺が、相手のオトコ呼び出して。
身につまされながら、断わって。
そのうえ、理不尽に恨まれて……」
そ、んなことも、あったっけ。
「オレの時も、逃げたしな」
彷徨わせた視線をがっつり絡ませる、勇人。
あ。うぅ。それは……そう、だけど。
「そういえばさ、初めてだったんだよ。
明日香が“断わって”って頼まなかったのって。
久我に告られたあん時だけ。
あれが初めて」
目を瞠る勇人。
大きく見開かれた瞳は、優しく細められて。
ぐいっと引っ張られる、つないだ手。
ぽすん、と。
勇人の胸に納まって、そのままぎゅっと抱きしめられた。
「お~い、サカるなよぉ。ちょっとは自重しろ」
「うるせ」と。
勇人は悪態をつきながら、手は緩めない。
「久しぶりなんだから、堪能させろ。
ヤなら、あっち向いてろよ」
勇人の暴言に、大げさなため息が聞こえた。
「複雑なんだぞ。
今までだって身内みたいなもんだし。
これからがっつり義妹になる明日香が、目の前でハレンチな」
ハレンチ、の言葉にどきり。
よっちゃんのことだから、由香里ちゃんに密告する。
勇人の腕からすり抜けようと、もがいてみたら。
「なーに、逃げようとしてんだよ。こら、明日香」
至近距離で睨む勇人に、首をふるふる。
「あとで、ね。
お願い。もうぜったい、逃げないから」
なっ、と。
真っ赤になって絶句した勇人は、咳払い。
そして呼吸を整えると、にやりと笑って。
「今夜、泊まるって約束しろ。そしたら、今だけ離してやる」
甘く囁く声に、ドキドキしながら頷いた。
「交渉成立?」と。
涼しい顔で問うよっちゃんに、ぎくり。
……見抜かれてる。
「安心していいよ。由香里にはチクらない。
ヘタに喋ると、こっちの身が危ういし。
なにより、可愛い義妹の初恋だからな」
ちょっとだけ、感動。
「俺さ。
ぶっちゃけ、嬉しかったんだよ。
明日香は何度言い聞かされても、俺のことを従兄だと思ってくれて。
それが、由香里を諦めない原動力にもなった」
感動メーターは、ぐんぐん上昇。
「あんだけオトコを拒否るのに、俺だけ身内扱いだっただろ?
こりゃ使えるな、って。
由香里にも、それで攻めたんだよ。
明日香の態度からしてみても、義兄に相応しいのは俺だけだぜ、ってさ」
……ダシに使われてるじゃん。
急降下するメーターの値。
「ただな~。
その理由が、物理的なもんだったのは正直ショックだったけど。
いつも家に入り浸って、飯食って、風呂入ってたからって。
いいか。それさ、絶対由香里に言うなよ。
俺の努力が水の泡になる」
もはや、感動メーターはマイナス数値。